ダニオ・エリスロミクロンは、細かな縦帯が美しいミャンマーの小型魚です。酸性の軟水を好む小型ラスボラと一緒に考えず、水質を確認してから迎えましょう。草陰を利用する群れの飼育、食べたことの確認、繁殖後の稚魚管理まで整理します。
ダニオ・エリスロミクロン(Danio erythromicron)。
写真:Cantospira / D.erythromicron crop.jpg(Wikimedia Commons) / CC BY-SA 4.0。掲載元の色・構図を保持。表示用に縮小。
撮影個体の一例です。色の見え方は照明などでも変わります。
ダニオ・エリスロミクロンの飼育データ
| 項目 |
目安・確認点 |
| 学名 |
Danio erythromicron。Microrasbora・Celestichthysの属名でも紹介される 参考:[1]・[3] |
| 分布 |
ミャンマーのインレー湖とサルウィン川中流域:CASの記載 参考:[1] |
| 大きさ |
最大約3cm:Aquarium Glaserの紹介(SL・TLの記載なし) 参考:[3] |
| 水温・pH |
21〜25℃、pH7〜7.8:Maidenhead Aquaticsの飼育推奨 参考:[2] |
| 群れと配置 |
同店は10匹以上を推奨。植物の茂みと穏やかなろ過を用意 参考:[2] |
| 流通個体 |
野生採集・養殖の両方が紹介されるため、購入個体の由来を確認 参考:[3] |
数値は出典の飼育目安・記録値です。販売個体の種類や状態、購入先の管理条件も確認してください。参考:[1]・[2]・[3]
TLは尾びれを含む全長、SLは尾びれを除く標準体長です。測定法の違う数値は同じ基準として比べません。
名前と大きさ:一般的なラスボラの飼い方を転用しない
現行のEschmeyer’s Catalog of FishesはDanio erythromicronを有効名としています。ミクロラスボラ・エリスロミクロンなどの販売名や、Celestichthysという属名も資料に残っています。名前の印象だけで別のラスボラの管理条件を使わず、種小名まで照合しましょう。 参考:[1]・[3]
Aquarium Glaserは成魚を最大3cmと紹介していますが、測定法は明示されていません。小さな幼魚だけで判断せず、購入時のサイズと今後の成長を区別します。縦帯が見える横向きの写真と販売表示を残しておくと、後から個体の説明を確認できます。 参考:[3]
水質:中性から弱アルカリ側の案内を基準に確認する
Maidenhead Aquaticsの種別案内は、中性から適度に硬いアルカリ側の水を勧めています。基本表のpHと水温は同店の推奨です。「小さな熱帯魚だから酸性軟水へ」と自動的に合わせず、購入先と自宅の水温・pH・硬度を比べましょう。 参考:[2]
AIによる説明イラスト 採水した水と色見本を比べ、水温計も確認する場面です。適した数値や確認項目は、魚・水草と現在の飼育条件に合わせて確かめます。
Glaserには水道水での飼育や室温での管理を紹介する記述もありますが、海外の水や室温は各家庭と同じではありません。使う水を測り、夏の高温・冬の低温も確認してから設備を選びます。無加温という方法だけを切り取り、年間を通してヒーターが不要とは考えないようにします。 参考:[3]
水槽と植物:隠れても観察できる群れの居場所を作る
本種は臆病な面のある魚として紹介され、Maidenhead Aquaticsは植物の茂みや浮草、穏やかなろ過を勧めています。水槽を選ぶ際は、群れを収容する余裕と、隠れた個体の摂餌を確認できる配置をあわせて考えます。根拠のない一律の最小水量はここでは示しません。 参考:[2]・[3]
配置図には「魚が隠れそうな場所」と「そこを見るための位置」を一組で書いてみましょう。前面から見えない場所でも、横から観察できれば管理しやすくなります。掃除する前に魚の位置を確認する習慣をつけ、見えないからと飾りをすべて動かす状況を減らします。 参考:[2]・[3]
餌:近づくことと、実際に食べることを分けて見る
Glaserは口に合う小さな市販餌を受け付けると紹介しています。Maidenhead Aquaticsの例には微粒の人工餌やミジンコなどの小さな冷凍餌があります。購入店で何を食べていたか聞き、導入後はその粒と魚の食べ方を見比べます。 参考:[2]・[3]
AIによる説明イラスト 給餌口を開け、スプーンで少量の餌を用意する場面です。餌の種類・粒の大きさ・与える量や与える場所は、魚の口や食べ方に合わせて選びます。
観察メモは「餌へ出た」「口に入れた」「他魚に取られた」を分けると具体的になります。臆病さを理由に食べていない状態を見過ごさず、隠れた個体も摂餌できたかを確認しましょう。相談時には餌の名前だけでなく、食べる場面の動画も添えると状況を伝えやすくなります。 参考:[3]
混泳と日常観察:静かな魚が食べられる環境かを見る
Glaserは本種を穏やかでやや臆病な群泳魚としています。他種を加える前に、同じ水質で飼えることと、本種が餌へ出られることを別々に確認します。同じミャンマー原産でも、すべて同じ生息環境や飼育条件とは限りません。 参考:[1]・[3]
下の表は、導入後の変化を記録するためのものです。魚が見えなくなったときも、すぐに群れを買い足すのではなく、どの場所で何をしているかを先に確認します。異変が続く場合は、水質の測定値と行動の記録をそろえて販売店へ相談しましょう。 参考:[2]・[3]
隠れがちな群れを点検する表
| 確認する場面 |
見方・次の行動 |
| 見える魚が少ない |
草陰を観察できる位置から数を確認し、給餌時にも見比べる 参考:[2]・[3] |
| 餌の前で引き返す |
他魚が近づく場面と粒の大きさを確認する 参考:[3] |
| 夏場に水温が上がる |
設定値でなく実測値を記録し、購入先へ設備と管理方法を相談する 参考:[2] |
繁殖は稚魚の餌と、卵を移す水の準備が要点
Maidenhead Aquaticsは、モスや産卵モップについた卵を、水質を合わせた別の孵化水槽へ移す方法を紹介しています。卵を守るための移動でも、水の条件が違えばよいわけではありません。採卵を始める前に、容器と管理水を準備しておきましょう。 参考:[2]
Glaserは親が子を世話せず、稚魚の育成が課題になると説明しています。初期にはインフゾリアなどを使い、成長に合わせて餌を替える案内もあります。産卵日だけでなく、泳ぎ始めた日と食べた餌を記録し、親魚の通常食でそのまま育つとは考えないようにします。 参考:[2]・[3]
ダニオ・エリスロミクロンのよくある質問
ハナビと同じ魚ですか?
別種です。本種はDanio erythromicron、ハナビはD. margaritatusです。似た小型魚としてまとめず、それぞれの水質と給餌条件を確認してください。 参考:[1]
インレー湖だけにいる魚ですか?
飼育資料では湖固有とされることもありますが、CASの現行記載にはサルウィン川中流域も含まれます。本ページではその分布を採用しています。 参考:[1]・[3]
酸性にする底床を使えば飼いやすくなりますか?
酸性化を目的に選ぶ前に、購入先と自宅の水を確認します。本種の飼育案内は中性から弱アルカリ側で、他の小型魚用の管理方法がそのまま適するとは限りません。 参考:[2]
産卵はできても稚魚が育たないことはありますか?
稚魚育成が課題として紹介されています。親から卵を守る方法に加え、水を合わせた管理場所と初期餌を先に用意しましょう。 参考:[2]・[3]
購入前に確認したいこと
- 学名と野生採集・養殖の別を確認した 参考:[1]・[3]
- 自宅の水温・pH・硬度を測り、購入先の水と比較できる 参考:[2]
- 草陰の魚が実際に食べる場面を観察できる 参考:[2]・[3]
- 繁殖時は水を合わせた孵化水槽と初期餌を用意できる 参考:[2]・[3]
関連ページは特徴や飼育条件を比較するための案内です。混泳できる組み合わせを示すものではありません。
参考資料・情報の確認について
飼育施設・専門店の飼育案内と分類資料を照合して編集しています。野外の最大サイズと水槽内の目安を区別し、流通名だけでは種を特定できない場合は本文に記載しました。資料確認日:2026年9月22日。
- Eschmeyer’s Catalog of Fishes:Danio属・erythromicronの項:現行の学名とミャンマーの分布。ハナビとの種名の違いも参照。
- Maidenhead Aquatics:Emerald Dwarf Rasbora:水質、群れ・配置、給餌と採卵後の管理の飼育案内。
- Frank Schäfer・Aquarium Glaser(2026):Celestichthys erythromicron:同社が扱う魚の大きさ・流通・行動と稚魚育成の解説。学名と分布はCASを採用。